※2026年9月に最新情報へ見直しました。

ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームが2013年に発表した調査では、男女合わせて約20万人を対象とした追跡調査の結果、1日2〜4杯のカフェイン入りコーヒーを飲む人は、ほとんどコーヒーを飲まない人・カフェインレスを飲む人に比べて自殺のリスクが約50%低かったと報告されています。あくまで観察研究による関連であり「コーヒーを飲めばうつ病が治る」というものではありませんが、コーヒーとメンタルヘルスの関係について分かっていることを紹介します。 ◆コーヒーとうつ病の関係、何が分かっているのか
コーヒーに含まれるカフェインは、脳内で眠気や神経の働きを抑制する「アデノシン」という物質の作用をブロックすることが知られています。アデノシンの働きが弱まることで、セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンといった気分や意欲に関わる神経伝達物質の働きが相対的に活発になり、これが軽い抗うつ的な作用につながるのではないかと考えられています。また、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種クロロゲン酸にも、抑うつ状態のリスクを軽減する可能性が指摘されています。
国立精神・神経医療研究センターが2024年5月に発表した日本人8万人超を対象とした調査でも、ブラックコーヒーを飲む人はうつ病のリスクが低い一方、砂糖入りの甘いコーヒーや清涼飲料はうつ病リスクの上昇と関連していたと報告されています。飲み方によって結果が変わりうる点は覚えておきたいポイントです。
◆浅煎り・深煎り、どちらを選ぶといいの?
コーヒーの焙煎度合いには浅煎りと深煎りがあり、一般にクロロゲン酸は焙煎が浅いほど残存量が多いとされています。クロロゲン酸はカフェインと並んでコーヒーに多く含まれるポリフェノールの一種です。インスタントコーヒーにも一定量含まれていますが、ドリップで淹れたレギュラーコーヒーの方が含有量は高い傾向にあると言われています。とはいえ、焙煎度合いによる差は飲み方や好みの範囲の話であり、深煎りが好きな方が無理に浅煎りに変える必要はありません。
◆うつ病以外にも報告されている関連
クロロゲン酸には、脂肪の代謝に関わる作用や、抗酸化作用による肌への好影響も期待されており、クロロゲン酸を訴求したトクホ(特定保健用食品)のコーヒーも販売されています。また、コーヒーを習慣的に飲む人は飲まない人に比べて脳卒中や脳梗塞の発症率が低い傾向が複数の疫学研究で報告されており、特に脳出血で関連が強いとする報告もあります。アルツハイマー病についても発症リスクとの関連を調べる研究が続けられています。いずれも観察研究に基づく関連であり、コーヒーを飲めば病気を防げると保証するものではない点には注意してください。
◆コーヒーはあくまで生活習慣の一つ、専門的な治療の代わりにはなりません
ここまで紹介した研究は、いずれもコーヒーを飲む習慣とメンタルヘルスの「関連」を示す観察研究であり、うつ病そのものの治療法として確立されたものではありません。気分の落ち込みが2週間以上続く、何をしても楽しめない、死にたい気持ちが浮かぶといった場合は、コーヒーなどのセルフケアに頼らず、早めに心療内科・精神科や、お住まいの自治体の相談窓口に相談してください。「よりそいホットライン」(0120-279-338、24時間無料・通話無料)など、電話やSNSで相談できる窓口も用意されています。
◆まとめ
コーヒーに含まれるカフェインやクロロゲン酸には、気分や意欲に関わる神経伝達物質の働きを助ける可能性があり、疫学研究では適度な摂取とうつ病リスクの低さとの関連が繰り返し報告されています。ただし、これはあくまで生活習慣としての関連であり、治療の代わりになるものではありません。1日2〜4杯程度を目安に、無糖・ブラックで楽しみつつ、飲みすぎによるカフェイン過剰摂取(不眠・動悸・胃腸の不調など)には気をつけて、気になる症状があれば専門家に相談するようにしましょう。

